Issue: March 2010
March 01, 2010
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ホスト角膜のデスメ膜を温存する新しい角膜内皮移植術(nDSAEK)

デスメ膜非剥離角膜内皮移植術(Non-Descemet stripping automated endothelial keratoplasty: nDSAEK)は、フックスジストロフィが比較的稀なアジア人の眼により適している可能性があ&

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小林 顕医師

フックス角膜ジストロフィ以外の水疱性角膜症眼における角膜内皮移植術(DSAEK)において、デスメ膜を剥離除去しないことにより、手術がより容易かつ単純になる。

フックス角膜ジストロフィ眼は、角膜内皮面の疣贅(グッタータ)を特徴とし、デスメ膜の混濁と合わせて、それらは視力低下の原因となりうる。そのため、フックス角膜ジストロフィ眼ではデスメ膜の剥離除去が有益であると一般的に考えられている。しかし、アジア人の眼では角膜移植術の原因疾患としてフックス角膜ジストロフィは比較的稀な疾患であるため‐例えば、日本ではフックス角膜ジストロフィの治療のために施行される角膜移植術は2%未満と推定されている‐一部の症例では、デスメ膜を剥離除去しない角膜内皮移植術がより安全で、効果も高く、望ましい選択肢でありうる。

金沢大学大学院医学系研究科の小林 顕医師(MD, PhD)によると、デスメ膜非剥離角膜内皮移植術(nDSAEK)には、DSAEKを上回る利点が幾つかあり、特にアルゴンレーザー虹彩切開術に続発する内皮機能不全が角膜移植の適応症としてはるかに多いアジアでは有利であるという。注目すべきは、小林医師によるとnDSAEKにより手術時間が短縮され、またデスメ膜剥離の際に生じうる視軸の角膜実質への障害やドナーホスト層間の不完全な接着などのリスクが低下する。

“ホスト角膜のデスメ膜と角膜内皮層を温存することが術後成績に悪い影響を及ぼすことはない。本術式(nDSAEK)は、トレパンブルー、照明光、前房内への空気注入を用いても視認性が不良なためにデスメ膜の剥離除去が極めて困難である高度な角膜浮腫のある眼に特に有用である。”と小林医師は述べた。

ダブルグライド挿入法

DSAEKの場合と同様にnDSAEKにおいても、100 µm未満の薄いドナーグラフトを内皮を傷害せずに前房内に挿入する操作は困難である。ドナーグラフトの挿入法には二つ折り法や引き込み法などが実施されているが、更なる工夫を行うことにより、ドナーの角膜内皮細胞損傷のリスクを低減しつつ、100 µm未満の薄いドナーグラフトにおいても挿入を容易に行うことができるようになる。

小林医師によると、前房メインテナーによる最小限の持続灌流下で、IOLグライドとBusinグライド(モリア社)を用いた引き込み法‐小林式ダブルグライド挿入法‐を行うことにより、ドナーグラフト内皮の傷害を最小限にし、かつ、前房内でのドナーの復位(unfolding)が不要になり、自然に開くようになる。

“ドナーグラフトの偏位を防ぐため、最低1時間は前房内を空気で完全に置換する方法を推奨しています。また、空気による瞳孔ブロックを起こさないために25ゲージの硝子体カッターを用いて下方に非常に小さい虹彩切除を置くのが良いと思います。”と小林医師は述べた。

2008年に小林医師らが発表した研究によると、アルゴンレーザー虹彩切開術に続発した内皮機能不全に対する治療としてnDSAEKが施行された患者において、「内皮細胞減少が少なく、術後視力が良好であり、さらに惹起される乱視が少ないなど、優れた臨床成績」が得られたという。

無症状の混濁の残存

さらに最近、小林医師らはレーザー生体共焦点顕微鏡を用いて、水疱性角膜症に対しnDSAEKが施行された患者10例10眼の前向きの評価を行い、本術式後の創傷治癒過程について新しい知見が明らかになった。

ハイデルベルグレチナトモグラフ2ロストック角膜モジュールによる典型的な術前画像では、角膜上皮浮腫、上皮下混濁、ケラトサイトの蜂巣状パターン、および角膜実質の中間から深層の微小な針状高輝度物質が認められた。研究者らによると、これは「水疱性角膜症によって生じる病的変化を示唆するものである。」

術後に繰り返し行われた画像検査の結果、上皮下混濁およびドナーホスト角膜層間の混濁は時間の経過とともに減少していることが明らかとなった。統計解析は行われなかったが、両値について観察された割合と最終的な残存の程度の平均は、過去にDSAEK後に見られたものと同程度であった。6ヵ月時点で、上皮下実質混濁の平均スコアはベースライン時の2.8から1.4に低下し、ドナーホスト角膜層間の混濁の平均スコアは術後1ヵ月の2から1に低下した。

“我々の研究で示したように、患者の70%はnDSAEK後に1.0以上の視力を獲得した。この結果は今までに報告された従来のDSAEKと比較し極めて良好なものである。” – by Bryan Bechtel

References:

  • Kobayashi A, Yokogawa H, Sugiyama K. In vivo laser confocal microscopy after non-Descemet’s stripping automated endothelial keratoplasty. Ophthalmology. 2009;116(7):1306-1313.
  • Kobayashi A, Yokogawa H, Sugiyama K. Non-Descemet stripping automated endothelial keratoplasty for endothelial dysfunction secondary to argon laser iridotomy. Am J Ophthalmol. 2008;146(4):543-549.
  • Shimazaki J, Amano S, Uno T, Maeda N, Yokoi N; Japan Bullous Keratopathy Study Group. National survey on bullous keratopathy in Japan. Cornea. 2007;26(3):274-278.

  • 小林 顕医師(MD, PhD)の連絡先:〒920-8641 石川県金沢市宝町13-1 金沢大学大学院医学系研究科視覚科学、e-mail:kobaya@kenroku.kanazawa-u.ac.jp